そうすると何故か、香耶ちゃんは驚いたように目を見開いた。

 ……ん? 私、何か変な事言ったかな?

 香耶ちゃんの反応を不思議に思い、尋ねてみようかなって思った。

 でもその前に、言わないといけない事がある。

「香耶ちゃん。」

 小さく名前を呼んで、香耶ちゃんの意識を私に向ける。

「何?」

 香耶ちゃんは不思議そうなきょとんとした顔で、私のほうに向き直ってくれる。

 その事を確認してから、私は口を開いた。

「私……もう、先輩のこと諦める事にしたんだ。」

「…………え?」

 ゆっくりと発した言葉は、私にはとても残酷に聞こえた。

 自分で決めた事なのに、何でこんなにも心が揺らぐんだろう。

 香耶ちゃんを置いてけぼりにして、そんな事を考える。

 そして次の瞬間、凄い力で両肩を掴まれた。

「ど、どういう事なのそれ!? 菜花、あんなにも篠碕先輩のこと好きだったじゃない! なのに何で、そんな急に……。」

「こ、声が大きいよっ……!」

 思ったよりも香耶ちゃんの声量が大きく、慌てて人差し指を自分の唇の前に持ってくる。