溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「菜花……!」

 呼び止める香耶ちゃんの声を無視し、涙を我慢して廊下を走る。

 誰にも見られないようなところ……。

 情けない姿を誰にも見られたくなくて、開いていた近くの空き教室に駆け込む。

 ここなら、大丈夫だよね……。

 内側から鍵をかけたのを確認した途端、私は崩れ落ちるように座り込んだ。

「いお、り、せんぱ、い……っ。」

 香耶ちゃんが言ってたのは、こういう事だったんだ。

 後悔しない?って言ってくれたのは、香耶ちゃんの最後の引き留めだった。

 だけど……見てしまった。

 おかげで心にあったもやもやは晴れたけど、悲しみと苦しみと“失恋”という言葉が繰り返される。

 私、先輩と別れてから泣いてしかない。

 まともに笑えた事が、一度でもあった……?

 ……ううん、なかった。

 先輩と別れてから、この世の全てを失ったような感覚に囚われて泣くしかできなくなっていた。

 涙に変えないと……壊れちゃいそうだったから。

 この気持ちを処理する事ができなくて、涙に変えて凌いでいるに過ぎない。