溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 うーん……でも、喧嘩するほど仲が良いって言葉もあるくらいだし、きっと二人は仲良くなれる……はず!

「じゃあね、藤乃さん。」

「あっ、うんっ。」

 市ヶ谷君はにこっと爽やかな笑みを浮かべてみせると、身をひるがえして男の子たちの輪に入っていった。

 その瞬間、香耶ちゃんが大きなため息を吐き出す。

「はぁ……やっぱあたし、市ヶ谷のこと嫌いだわ。」

「そ、そんな事言っちゃダメだよっ……!」

 本気のトーンで言っている香耶ちゃんに、慌ててそう言う。

 か、香耶ちゃんと市ヶ谷君は合わないのかな……。

 ついさっきまではポジティブに考える事ができたのに、ネガティブな方向へと向かってしまう。

 どうすれば二人は、仲良くなれるんだろう……?

 私は心の隅で思いながら、香耶ちゃんと他愛もない話をし始めた。



 午前の授業が全て終わり、お弁当を持って急いである場所に向かう。

 授業、終わるの遅かったからもう待ってるかな……。

 歩く速度を速めながら、ぼんやりとそう思う。

「先輩、お待たせしましたっ……!」