「俺と……付き合ってください。」

「は、はいっ……。」

　“篠碕庵”

　彼はこの学校で知らない人はいないと言われるほど、有名な人。

　頭脳明晰で運動神経抜群、コミュニケーション能力も圧倒的に高く誰とでも仲が良い。

　その上かっこいいと評判の人で、そんな完璧さんから告白されたのは私が入学してからすぐの事だった。

　きっかけは私が先輩のハンカチを拾った事だったらしく、今思えば一目惚れに近いものらしい。

　私は最初、人と付き合うという概念さえ持っていなかった。

　だから申し訳ないと思って、一回は断った。

　けれど先輩は諦めず、私に告白をしてくれた。

　私は先輩のこと好きだけど、恋愛対象と言われれば悩んだ。

　先輩と関わる事は多く、趣味や好みも似ていたから気を許せる人であった。

　そんな先輩から告白されて、最終的には私が折れて付き合う事になった。

　その時はまだ恋愛感情なんて知らなかったから、付き合うのもどういうものなのか分からなかった。

　彼氏ができた事もなかったし、こうして真剣に告白してきた人は初めて。