溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 そして次の瞬間……市ヶ谷君にベンチに押し付けられていた。

 背中にベンチの背もたれが当たり、両端には市ヶ谷君の腕。

 目の前には……綺麗で整っている市ヶ谷君の顔があった。

「いちがや、く……」

「この前も言ったけど、俺は藤乃さんが好き。篠碕先輩よりも幸せにするって誓う。だから……俺と付き合って。」

 どう、したら……いいんだろう……。

 真剣で熱のこもっている瞳に見つめられて、つい私も見つめ返してしまう。

 だけどその直後に視線を逸らして、呟くようにして訴えた。

「ごめんなさい、やっぱり私は市ヶ谷君とは付き合えない。私は先輩以外を好きにはなれないし……新しい恋をする気も、ない、から。」

 香耶ちゃんにも言ったけど、私の気持ちは先輩以外には揺るがない。

 揺るぐ事を……恐れている。

 市ヶ谷君は真剣に告白してくれているけど、私には応える事なんてできない。

 市ヶ谷君とはずっと友達でいたいから……尚更。

 自分の胸の内を言って、解放してもらおうと奮闘する。

 ……でも、市ヶ谷君は私に甘い声で囁いてきた。