風が吹く。

周りには沢山の葉っぱが舞っていた。

そこに,放課後の道を歩く2人。

恋と,純だ。



「もうすっかり秋ですね,恋くん」

「あー,ほんとだ」



転科を決めてから,もうずいぶん経って。

2人の間には更に強い絆と安定感が生まれていた。

本人達は知らないけれど,いつか純が初に憧れたように。

2人に憧れるカップルは多い。



「あ」



純が目の前の2人に声をあげる。

初と,紺だった。

2人が今どうしているのか,詳細なことは分からない。

だけど,学園自体が変わるわけではないため,度々見かけることもある。

まだ順調そうで,純は嬉しくなった。

例え彼女らがその事実を知らないとしても,純は確かに,あの2人に背中を押されたのだから。

ひらりと落ち葉が初の頭について,純はまた

(あ)

と思った。



「初」



紺もそれに気付き,自然な動きで初に近づく。



「葉っぱ,ついてるけど」



(まだ,敵わないかな)

あまりにナチュラルで,初もちっとも気にしてなくて,その様子を見た純は思った。

それでもいいと,隣の恋を見ればそう思える。

純は恋ににこりと笑いかけた。

そうすれば,恋からも同じかその何倍も甘やかした笑みが返ってくる。

再び視線を前に向ければ



「え? どこですか?」



と紺の言葉に足を止めた初が,大きな瞳を紺に向けていた。



「ここ」



紺が指したのは全く関係のない場所。

その後もこここことあちこち指差して,初はくるくるとその場を回ることになる。

くすりと我慢できなくなった純が笑うと,隣で恋も肩を震わせていた。

(どうなるんだろう)

そう思って成り行きを見守っていると



「うそ,ここ」



とうとう紺が鮮やかな葉っぱを初の頭から取り除く。

そして文句を言おうと振り返った初に



「可愛い。とっちゃうの,勿体なかったんじゃない?」



飛びきりのスマイルを向けた。



「~っ紺くん! ずるいのはちっとも変わりませんね!」



入学したときよりも,ずっとずっと初に甘く丸くなった紺。

初が怒るのを見た純は,恋と2人,再び笑いあった。

握られた手が,あったかい。

それはまるで,秋の冷たさを内側から変えていくようだった。
                 ーFinー