相手を知る,を意識すると,案外すぐに距離が近づくのだと,純は知った。

話す時間は恋が作ってくれたし,何となく声をかけづらかったスマホを扱っている時も,お互い『何見てるんですか?』と一緒に動画を見ることが増えた。

例えば,わざと純が恋のアイスを食べてみても,恋は怒るどころかおかしそうに笑う。



『ごめんなさい…』



そうして純が新しいアイスを後日恋に渡すまでが,たまに行われるイタズラのワンセット。

嗜好品は個別に買っていたのに,相手の分まで買って帰ることもあった。



『このたまご,賞味期限過ぎてるけど』

『えっ! ほんとですか?!』

『うそ。今日の夕飯,一緒に作ろ』



恋の気まぐれな冗談も,嫌いじゃない。

(このままだといいな)

ただでさえ過ごしやすかった空間が,今はとても楽しいものになっている。

やっぱり,自分達が離れるにはまだ早い。

そう考えて,そう思えることに嬉しくなった純は頬をふにゃふにゃと緩める。

そうして2年生になったはずなのに…

進級式



『俺がいるじゃん』



突然近くから飛び込んで来たナンバーワンカップルの会話に視線を移していた純の耳に



『2年生1発目の課題は,パートナーの入れ替えです!!』



到底信じがたい言葉が飛び込んで来た。

これは……隣のクラスだったカップルを見ている場合ではない。

純は隣に立つ恋を見上げる。

想定していなかった事態に,恋もまた。

右頬を人差し指でかきながら,やられたと呆れ顔を浮かべていた。