はぁ……

もし私のペアになった人が,もっと欲のある人だったら?

落ち着きの欠片もない,元気で図々しい人だったら?

自分の将来と,自身の通う特殊なシステムを持った高校とを思い,勉強中だったはずの少女は隣にぴとりと置かれた空の机をみた。

それは,今はここにいないパートナーの勉強机だ。

自然と瞼が下がって,またはぁと息を吐く。

頬杖をついたまま,その少女可児 純(かに きいと)は人差し指で頬をついた。

気持ち長めのミディアムな髪が,さらりと流れる。

悩ましげなその表情は,部屋全体の時をも止めているかの様だった。

目に浮かぶ,『私立七海学園高等学校 第一回 入学式』と書かれた板。

パリピの代名詞みたいな1組の夫婦。

その人達は



『知っての通り私達は,PC·スマホ·アプリ等世界一のシェア数を誇る大IT企業"セブンオーシャン"の社長でもある』


見た目にそぐわない地位を持つ,この学園の創立者兼学園長の七海夫婦だった。