その5



「いろいろと調べた結果、お父さんの会社が買い取った場所には、造成工事で掘り出した”いろんなもの”を、主だった理事たちで勝手に場所を定めて埋めたようだったんだ…」

その”いろいろなもの”には、しっかりと調べれば動物の骨とかも含まれていたとウワサもあったそうです。
もしかしたら、人骨も含まれていたかもしれないと…。


...



「…造成工事中、その地域にずっと住む住人の中には、その辺を糾弾する人もいたそうだ。区画整理地に組み込まれている一部の地区は、”人の手”を加えてはいけない場所だと、先祖から伝え聞いているから外すべきだとね…。それが、あの現場で声をかけてきた中年の女性じゃないかと思えるんだ…」

そしてその女性は、造成工事が完了した直後、病死したそうで、その後、区画整理事業に抗議をする声はピタッと消えたらしいんです。

「…おそらく、現ナマ攻勢があったんだと思う。そんな中でも、あの女性だけは、そんな買収にも毅然として突っぱねて続けていたみたいだったんだよ」

父は当時の区画整理事業組合に口止めされた人達数人に、この話を聞き出したそうなんです。
つまり、信憑性は高いということなのでしょう。


...


「…しかもな、女性が手をつけてはいけないと指摘した地区は、この区画整理事業を推進した有力地権者の所有だったことがわかった。つまり、いわく付の土地を区画整理事業に組み込んで、資産価値を高めて自分は立地条件の良い区画で換地を受け、整備された宅地に化けたいわくの区画は地元に明るくない小規模地権者に換地として振り分ける…。そういうカラクリだったようだよ…」

父はいかにもやるせないと言った表情で、大きくため息をついていました。