その2



「これから話すことは、お父さんの懺悔話になるよ。おそらくショックを受けるだろうが、黙って死んでいく訳にはいかないんだ。聞いてくれるか…、麻子」

父の顔には悲壮感が漂っていました。
”本当は聞きたくない…”、これがその時の私の正直な気持ちでした。

でも、父に懺悔と言われれば、”ここで聞き届けないと後悔する…”、それも一方の正直な気持ちとしてあったのです。

「うん、しっかり聞かせてもらうわ、お父さん…」

私のその言葉を聞いて父は意を決したようで、表情をきりっとさせ、しっかりとした口調で話しを始めました…。

...


「…あれはもう17、8年前のことになる。M町で、ある物件を買い取ったんだ。まだ銀行取引ができていた頃だったからな。売主の建売業者が建築着工時にパンクしちゃって、基礎と土台までの状態で引き取ってね。更地に戻して転売する計画だった…」

父は解体業者に基礎の撤去工事を発注したそうですが、その間に即、買手がついたそうです。

「…結構人気のある旧区画整理地内の一角で、資金内容も心配ないお客さんが買ってくれてな。早速、業者の手配をしたんだが…。着工当日、作業を終えたそこの社長が会社に寄ってね…」

解体業者の社長は、前日の夜、現場で中年の女性に声をかけられた夢を見たそうなんです。
その女性は、”ここは変なものがいっぱい埋まってますよ。やめた方がいいですよ”と言うと、瞬きする間にいなくなっていたそうです。

「…それがやけにリアルだったと言っていたが、お父さんは聞き流して気にもしなかった。ところが…」

ここで父は明らかに顔がこわばりました。