ーー文化祭の時期が近づき、クラスの出し物の制作物に取り掛かり始めた。

クラスの出し物は、毎年六年生の恒例であるお化け屋敷。
六年生の全クラスがお化け屋敷なので、各クラス個性の出し所が勝負となる。



色画用紙やカラーセロファンやスズランテープや段ボール。
絵の具にマーカー。

多種多様な工作道具と知恵を使って、なんの変哲も無い教室を少しずつお化け屋敷へと変貌させていく。



私の担当作業は内装の迷路作り。
床に座って下書きしてある段ボールをらせん状の線になぞって、カッターで切っていた。



「こら、そこの男子!ふざけないでちゃんと真面目にやってよ」



真面目に作業に取り組んでいるノグは、作業をサボってゴミ屑を投げ合って教室内を走り回る男子に一喝。



「はいはい。ちゃんとやりますよ〜」



注意されて不機嫌になった男子は、茶化したようにそう言いながら後ろ歩きしていると…。

たまたま後ろでカッター作業をしている愛里紗に当り、その反動で右手に持っているカッターの刃が自身の左手の親指付近に当たってしまった。



「いったっ……」



愛里紗は傷から痛みが走るとカッターを手放して左手を覆う。
衝突現場を一部始終を見ていたノグは、目をギョッとさせる。



一瞬の出来事だった……。
親指の付け根からは、瞬く間に血がじわりと滲み出てくる。

血を見た瞬間、愛里紗の顔は顔面蒼白に。
迫り来る恐怖で怖くなり思わず悲鳴を上げた。



「キャーッ!」



教室中に愛里紗の声が響き渡った。
すると、クラスメイトは何事かと食い入るように集合して教室内はどよめきに包まれる。