愛里紗が神社の鳥居をくぐり抜けると、翔は普段と変わらぬ様子で池の鯉に餌をあげている。
しかし、翔は学校を休んだ愛里紗が鳥居の向こうからフラフラとした足取りで歩いているところを発見すると、餌やりの手を止めて立ち上がった。
頬がピンク色に染まっている愛里紗は、ボーッとした目つきで翔の前で足を止める。
「谷崎くん……」
「お前…。学校休んだくせにこんな所で何やってるんだよ」
愛里紗は心配の言葉を受け取ると、ホッとする。
谷崎くんは学校を欠席した私が来たから呆れてしまっているけど……。
先日の件は怒ってないみたい。
良かった。
「谷崎くんにどうしても謝りたくて……。この前は気持ちも考えずに暴走しちゃってごめんなさい」
「えっ、わざわざそんな事を言いに来たの?体調が悪いんだから別に今日じゃなくてもいいだろ」
「一日でも早く謝りたくて……。目が覚めた後に気付いたら神社に向かっていたの」
愛里紗は反省心を見せると、翔は表情をフッと和らげた。
「俺の方こそゴメン。怒鳴ったりして悪かったよ」
「ううん…」
愛里紗は瞳から涙がじわりと浮かぶ。
仲直り出来て良かった。
また以前みたいに神社に来れるかな。
また笑顔を交わす日々を送れるかな。
手の甲で涙を拭う愛里紗に対して翔は照れ臭そうにポリポリと頭を掻く。
「まだ具合良くないだろうし…。お前んちまで送るよ」
翔はフラフラしてる愛里紗の腕をギュッと掴みながら家まで送った。
家に到着すると、黙って家を出て行ってしまったせいか母はお冠状態に。
平謝りした後、部屋に戻って倒れこむようにベッドに横になった。
熱や頭痛は辛かったけど…。
谷崎くんと仲直りする事が出来て本当に良かった。