「あーりん…。あんた、焦り過ぎたんだよ」

「えっ…」



ノグはそう言い、愛里紗に顔を傾けた。



「ミクの告白を知って谷崎を取られたくないって思ったんでしょ」

「うん、二人が付き合ったら嫌だから」


「谷崎だってさぁ、あんたと噂になったり、ミクに告白されたり。短期間で恋沙汰に巻き込まれて気持ちに余裕が残されてるなんて思えない」

「…う、うん」


「その上、あんたはミクを褒めたり勧めるような言い方して…」

「私はっ…、ミクを勧めるような言い方なんて…」



愛里紗はカッとなって言い返したが、ノグは静かに首を横に振る。



「してる。無意識かもしれないけど…」

「………」


「少なくとも谷崎はそう思ってるだろうね。だから誤解したんじゃないかな。それに、ミクが告白した事を直接本人に聞くなんてどうかしてる」



愛里紗は自身の言動をノグに否定されると顔を俯かせる。

すると、黙って話を聞いていたミキが口を挟む。



「ねぇ、あーりんはどうしたかったの?」



ミキは愛里紗の顔をヒョイと覗き込んで、母親のように優しく問い尋ねた。



悪い所をキッパリ叱ってくれるノグは、父親のような役割であり。
優しく援護してくれるミキは、母親のような役割だ。