愛里紗は自分の事で精一杯で、翔の想いは二の次になっていた。
いつしか笑顔を忘れて表情が固く強張る。

翔の瞳は先程まで見せていた力強さが感じられなくなったような気はしたが、愛里紗は勢いに歯止めが利かない。



「でっ…でも、ミクだけじゃなくて、私もずっと谷崎くんの事が…」



話はいよいよ核心に迫っていこうとした、次の瞬間……。



「……何言ってんの?お前も他の奴らと一緒なのかよ」



翔は愛里紗の話を聞き入れるどころか、突然目を吊り上げて火の粉を浴びせた。
一方の愛里紗は、翔の激昂する姿に心臓が止まりそうなほど驚く。



沈黙はおよそ20秒ほど……。
二人の間に不穏な空気だけが流れている。

愛里紗は戸惑いながらも胸に手を当てたまま聞き返す。



「他の奴らと一緒って……。何言ってるかわから…」
「ふざけんな!」



翔は愛里紗に話す隙を与える間なく怒鳴った瞬間、まるで落雷が起きてしまったかのように二人の間に亀裂が入った。