翔は久しぶりに神社に訪れる愛里紗を見た瞬間、目を見開く。



「江東……」



自分達の噂が始まったあの日以来、愛里紗の足が神社から遠退いていたから驚くのも無理はない。



愛里紗は緊張によって意思通りに手足が動かない。
飲み込んだはずの唾は喉の奥に流れていく感覚がないし、髪の毛が逆立っているかのように気が張っている。

それでも、きちんと気持ちを伝えたくて、漬物石が乗っているかのように重くなっている足を進ませて翔の正面に立つ。



「あ……、あのね………。私、谷崎くんに話があるの」

「…うん。何?」



翔は愛里紗の心を見透かしそうなほど真っ直ぐに見つめている。
愛里紗は目線に戸惑いながらも、もう後戻り出来ないと思ってグッと息を飲んだあと勇気を振り絞って口を開いた。



「修学旅行の時にミクが谷崎くんに告白したって人から聞いて…」

「…あぁ、……うん」


「それで、谷崎くんがミクにどんな返事をしたかがすごく気になって…」

「………」


「あっ………あのっ。ほら、ミクってカワイイから、男子なら誰でも好きになっちゃうって言うか、いい子だし…何て言うか………」

「えっ……?」



愛里紗は急に早口になったり、しどろもどろ話したりと、不安定な気持ちを丸出しにしている。
だが、話を大人しく聞いていた翔は徐々に表情を曇らせていく。



頭の中は話したい事が整理出来ていないから支離滅裂に。
自分でも言ってる事がわからないし、彼も困惑している。

でも、話はまだ核心に迫っていない。



当然ミクへの告白結果は気になるけど、自分の想いも伝えたい。

彼に想いを伝えなければ悩み抜いた数日間以上に後悔してしまうのではないかと思って、気持ちが先走りしてしまった。