「はっはっは。恋神様はたま~に出てきて気になった方の縁結びするみたいですよ。先代からはいたずら好きの神様だと聞いております。私はお会いした事がないので詳しい事は分かりませんが」
「でも、たまにあそこでお茶をご馳走になりましたけど」
「お茶はおじいさんが運んで来ましたか?」
「えっ…いや。中にいたおばさんが…」
「その方はたまたま公民館の中にいらっしゃった近所の人かもしれません」
「あのおじいさんが神様なんて……、嘘だろ」
「プッ…」
私達は恋神様のイタズラが急に可笑しくなって、お互い顔を見合わせて笑った。
思い返せば、おじいさんは怪しげな事を言ってた。
『ワシは年を取らないんじゃ』ってね。
確かに宮司さんの言う通り、おじいさんが神様だとしたら年をとるはずがない。
きっと、恋神様は私達を巡り合わせる為に姿を現したのかもしれない。
私に勇気のアドバイスをくれたあの時が、最後だったんだね。
おじいさんにはまた会えると思っていたから、お別れの言葉が言えなかったよ。
でも、恋神様。
私達を再び引き合わせてくれてありがとう。
辛い時にいっぱい力を貸してくれてありがとう。
そうやって頭の中で神様に願った後、春の暖かい空気がフワッと私達二人を包み込んだ。
それは、長年恋を見守ってくれた恋神様が、私達二人に送った最後のメッセージだったかもしれない。
【完】