ーー長年の時を経て、晴れて恋人になった私達。

デートであれこれ色んな場所に行くのもいいけど、彼が隣にいれば場所なんて何処でもいい。


彼との会話一つ一つが、私達二人の深い思い出として刻まれている。





今日もいつものように仲良く手を繋ぎながら神社を訪れている私達だけど、二人とも疑問に思ってる事があった。

それは、昔は当たり前のように池の傍のベンチで日向ぼっこしていたおじいさんが、最近姿を現さなくなったから。



「そう言えば、最近おじいさん全く見なくなったね。元気にしているかな?もう年だし体調が良くないとか?」

「ん、だな。俺も最近同じ事を思ってた。ちょっと宮司さんにおじいさんの話を聞いてみるか」



私達二人は本殿に向かって宮司さんの所へ。



「あの、すみません。昔からこの神社によく来ていたおじいさんの件ですが、今どこにいるかわかりますか?少し話がしたくて…」



彼は心配した様子でそう聞いたけど、宮司さんは表情を曇らせて首を傾げた。



「…おじいさんって?一体、誰の事でしょうか?」

「普段は池の周りによくいて、白く長い髭が印象的な茶色い着物を着たあのおじいさんですよ」



いつも神社に来ていたおじいさんは、何処にでもいるような普通のおじいさんだったから、白い髭以外は特にこれといった印象がない。

だから、おじいさんについて上手く説明する事が出来ない。


しかし、宮司さんは考えた様子を伺わせた後、ピンと何かに辿り着いたかのように目を細めて頭を軽く頷かせた。



「あー、あー。なるほど」

「おじいさんの居場所を知ってますか?お元気でいらっしゃいますか?」



興奮気味に一歩前に出た翔はひどく心配していた。

何故なら、幼い頃から毎日相手をしてくれて、身内のような存在だったから。