ーー1時間半前。
出かける支度を終えて部屋を出ようとして扉に手をかけたその時。
窓から差し込んだ強い風がふと足を引き止めた。
その風があまりにも温かくて強かったから、窓を閉めようと思って室内をUターンすると、学習机の引き出しに目が止まった。
その引き出しの中に入っているのは、宝箱と恋日記。
宝箱の中には、翔くんとの思い出のイルカのストラップと、もう使えなくなるほど小さくなったキャラクターの鉛筆がしまってある。
身に吹き付けた風は、『忘れ物だよ』と言わんばかりの一足早い夏の香りがする温かい風だった。
だから私はその忘れ物に今の想いをギッシリと書き綴って、カバンにしまってから家を後にした。
でも、それから数時間後。
まさか彼の目に触れるなんて…。
恋して。
助け合って。
ぶつかり合って。
繋がって。
別れて。
そして、再会して……。
小さな恋から始まった大きな愛。
そこにはジェットコースター級の波乱が待ち受けていたけど、私と彼はお互いを信じて一つずつ乗り越えていった。