度重なる恋の障害を乗り越えたその時、過去の呪縛から解き放たれた私に真の幸せが訪れた。
ムードの欠片すら感じない古めかしい神社の一角だって、私にとっては人生最高に幸せな恋のステージに。
「これからはずっと傍にいる。約束するよ」
彼はそう言って、恋の自信を満ち溢れさせながら二人の未来を思い描く。
でも、散々寂しい想いをさせた罰として、小さなワガママを言いたくなった。
「……翔くん、迎えに来るのが遅いよ。あまりにも長い時間待っていたから、二人とも大人になっちゃったよ」
「ごめん。これからは二度と待たせない」
「毎日ポストを覗いていたのに手紙が届かなかったよ」
「ごめん。あと一歩の努力が足りなかったから、直接届けに来れなかった」
「それと、私の大事な親友を傷つけないでよ。あの時は翔くんのせいで咲と大喧嘩したんだから」
「ごめん。あの時は恋の仕方が分からなかったんだ、……お前しか」
彼は春のような温かい眼差しで私の髪を優しく撫でた。
今まで流した涙は苦しかったり辛かったりした悲しみの涙だったけど、いま噴水のように湧き出ているのは嬉しさと喜びに溢れている幸せの涙に。