本殿の一部に腰を下ろしている私の隣に彼が座る。
ここで二人きりで話すのは、一度目のお別れをしたあの日以来のこと。
当時よりはずっと大きく成長したから、お互いの肩の高さが違う。
「俺は八年前の別れ際にお前と約束をした。『俺は必ず愛里紗を迎えに来るから』ってね。だから、今日はここに来たよ」
「…でも、私と会えるかどうか分からなかったよ」
「会えても運命。会えなくても運命だった。俺達はそれぞれの地で別々の空気を吸ってるうちに、心のタイミングが少しずつズレていた。…だから、次にタイミングが合った時にあの時の約束を守ろうってね。
もし、今この瞬間も二人のタイミングが合わなかったとしたら、タイミングが合う日まで何度でも何年かかっても会いに来る。
半年後も、一年後も、十年後も、お前だけを一途に愛していく自信があるから」
「翔くん…」
運命の別れの日から八年経っても。
私が大事なモノを守る為に突き放してから三年経っても。
彼はあの日の約束を守る為に、愛おしい眼差しで一途な想いを告げた。