すると、聞き心地のよい低い声が身体を包み込んだ。
「まさかと思ったけど……。本当にいた」
「えっ…」
ドキン……
今さっきまで平常心だったのに、聞き覚えのある声と、懐かしい香りに心がくすぐられてしまった瞬間、胸を打つ鼓動が時の扉のノックを始めた。
胸の高鳴りは記憶にある。
私の記憶に間違いがなければ……。
期待で胸を弾ませながら額に手をかざして太陽の日差しを遮り、声の主へと目線を向けた。
すると、逆光で真っ暗だった人影は、目が慣れてきたと同時に姿形がはっきり見えるくらい鮮明に。
軒下に座る私と、左斜め後ろに立つ彼。
お互いの目と目が合った瞬間、私は数年ぶりに恋の音が胸の中で奏で始めた。