ザッザッ……



ストローから次々と新しい命を吹き込みながら昔の翔くんを思い描いていると、遠方から砂利を踏みしめている足音が徐々に近付いてきた。

人の気配を感じたと同時にシャボン玉を吹く手を止める。



この場所は一般の参拝客は進入禁止区域だ。

本殿の裏側に侵入した事と、シャボン玉を吹いている事がバレて注意されるのかと思い覚悟を決めた。



「勝手に入ってしまって、すみま…」



取り敢えず侵入した事を先に謝ろうと思って、振り向きざまに口を開いた。
だが、足音の先へ目を向けた瞬間、フワッと懐かしい香りが鼻に漂う。

すかさず顔を見上げたが、傾き始めた太陽の眩い光が視界を塞ぐ。