カバンに入れてきたシャボン玉セットを取り出して、恋日記をカバンの上に置いた後、キャップに注いだシャボン液をストロー先に浸して咥えたストローに息を吐いてシャボン玉に新しい命を吹き込んだ。
優しく息を吹き込めば大きなシャボン玉。
少し勢いよく息を吹き込めば、小さく連なったシャボン玉がたくさん出来る。
小さなシャボン玉は、太陽の光を燦々と浴びて反射させながら輝きを放ち、たまにぶつかり合うように連なって空を泳いで、とても幻想的でキレイだけど。
私は昔から大きなシャボン玉の方が好きだった。
太陽の光でゆらゆらと虹色に光り輝き、空高く舞っていく姿を割れる最後のその瞬間までゆっくりと見届けていたり。
大きなシャボン玉は一つだけじゃ可哀想だから、次々と命を吹き込んで仲間をたくさん作った。
近くに仲間がたくさんいる事を知ったら、心強さを感じて少しでも長く宙を舞えると思ったから。
翔くんが街から消えた翌日から、神社の軒下でこうやってシャボン玉を吹いて寂しさを紛らわせていた。
空に揺らぐシャボン玉が、まるで私の人生そのものを物語ってるような気がして、大きなシャボン玉同士がぶつからないように、割れて消え去らないようにと、シャボン玉の行方を見守ったりして時を過ごした。
でも、シャボン玉を吹いていたあの当時と一つ違うのは……。
三年経った今でも、彼の香りは心の中でしっかり覚えている事。
気持ちが繋がったあの瞬間から、忘れようとしても忘れられないくらい記憶に刻まれている。