神社の鳥居を抜けて参道を少し歩くと、右側に小さな池。
更に少し進むと左側に手水舎。
正面には小さな本殿。


中央の参道を外れて白い砂利を踏み進みながら本殿の左裏側に回ると、八年前に翔くんが引っ越しする直前に二人で最後に身を隠した思い出の場所がある。


ひと気のない本殿の裏に周り、軒下で楽しかったあの頃を思い浮かべた。



「あー、懐かしいな……」



長い歳月を重ねても代わり映えのしない光景が懐かしくて、ついひとり言が漏れた。



翔くんとお別れしたあの日はお互い離れ離れになるのが嫌でストライキをしたっけ。

当時は幼くて考え方が甘かったから、こうやって神社に身を隠して親を困らせれば、少しは聞く耳を持ったり、引っ越しを考え直してくれるんじゃないかと思ってた。



でも、実行に移した時は既に遅し。
夕方に引越しの荷物の運搬を終えていから、新しい街にただ身を向かわせるだけだった。


あの頃は街に留まる事に全力だったし、冷静に対応できる年齢じゃなかったから、まだ最後の願いが通じるんじゃないかと信じて止まなかった。