高校生だった頃、まるで日常会話のように咲の悪口を言っていた三人組は、三年生に進級してから三人ともクラスがバラバラになった。

リーダー格の彼女に新しい彼氏が出来た途端、咲の存在がかき消されてしまったかのように悪口はピタリと止んだ。



悪口を言った側はその事実を簡単に忘れてしまうかもしれないけど、言われた側は案外根強く残るもの。

きっと、二年に渡って悪口を言われ続けた咲は、あの時の悲しみが嫌な思い出として胸に刻まれているはず。



私としては、本人に謝って欲しかった。

それは正義感とか善意的な事ではなく、彼女達も一人前の人間として成長して行く為に必要不可欠だと思っているから。


でも、一度収まった話を再び蒸し返す事で、また火種になってしまう事を避けたかったから敢えて口を噤んだ。




実は悪口がピタリと止んだ理由は、別の考えも持ち合わせていた。

バレンタインの日に三人組から咲を庇った木村が、あの後も私達の見ていないところで、悪口を止めるように働きかけていてくれたのかもしれない。