ところが、部屋に鳴り響いたインターフォンに愛里紗の母親が出ると、モニターには先程帰宅したばかりの翔の姿が。
愛里紗は翔の姿が目に映ると、玄関へと走り向かった。
愛里紗は忘れ物でもしたのかと思いながら、玄関の扉を勢いよく開ける。
ガチャ………
「谷崎くん!どうしたの?何か忘れ物?」
「いや………えっと………」
翔はモジモジと照れ臭そうにカバンを開き、ガサゴソと何かを取り出す。
「これ、やる!俺からの誕生日プレゼント」
翔はその何かを愛里紗の手に押し付けるように渡すと、顔を真っ赤にしながら逃げるように背中を向けて走り出した。
「えっ?!…あっ……あっ」
それがあまりにも急だったから、一瞬何が起こったかわからなかった。
上手く言葉にならずに戸惑ってしまい、走り去る彼を目で追う事しか出来ない。
すると、翔は7、8メートル先で突然クルッと振り向いてニカッと笑顔でひと言。
「バイバイ、また明日!」
そう言って、手を振りながら来た道を再び走って帰った。
玄関に取り残された愛里紗はキョトンとしながらも、翔の照れた表情を思い返したら可笑しくなり、笑みを浮かべながら部屋へと戻った。