愛里紗は足を踏み出す前に大きく深呼吸して、息を吐いたと同時に足を進ませてビルから出ようとしている理玖を呼び止めた。



「理玖!」



理玖は三メートル先に立っている愛里紗に気付くと、嬉しそうにフッと笑みが溢れる。
すると、ズカズカと足を進ませて愛里紗の手をとる。

それは、まるで愛里紗の心を引き止めるかのように……。



愛里紗は「話がある」と伝えると、消失した笑顔と共に握りしめている手の力が一瞬弱まった。

そして、二人は話し合いをする為に場所を移す事に。





私達は駅近辺の公園へ移動した。
ここは、私が理玖にファーストキスをした思い出深い場所。

私にとって唯一落ち着いて話せる場所だった。



理玖はさっきから口を閉じたまま。
何かを考えている様子で口を開こうとしない。



私が先にベンチに腰を下ろすと、理玖も続いて腰を下ろした。

私達は隣同士に座っているのに、今はまるで赤の他人のように口を黙らせている。
普段ならすかさず私の肩を組んできたはずの理玖は、今はここにいない。