理玖と会わなくなり始めてからお互い溝が出来てしまった。

さすがの理玖も誘いを断られ続けると何かに気付いた様子。
最近は簡単な挨拶程度の連絡しか取り合っていない。



お互い気を使う時間は無言の時間。

だから、電話の会話さえ儘ならなくなり、まるで恋人だという事を忘れてしまったかのようにぎこちなくなり始めていた。


翔くんを忘れて理玖と再出発をしたいという都合の良い願いは、正直な気持ちに打ち砕かれてしまった。



気持ちが離れ始めてからは、毎日少しずつ理玖の心を傷付けている。
今まで愛情をたっぷり受けていたからこそ、私も理玖だけを見ていてあげたかった。



本当は大事なモノが壊れていく恐怖を知っているから、壊さぬようにやり過ごしていこうと思っていた。
今までの私は毎日平穏に過ごしていく事が真の幸せだと思っていたから。



でも、神社のおじいさんからのアドバイスと、咲の新たな決意を聞くと、私が壊さぬようにと守り抜こうとしていた中に真の幸せが含まれていない事を知った。


気持ちを誤魔化してる時点で幸せじゃないし、距離を置き始めた時点で理玖を不幸にしている。
巻き添えを食らってる理玖は、計り知れないほど苦しい毎日を送ってるに違いない。