翔くん。
ごめんね。
咲と理玖の気持ちを犠牲にしてまで一緒になれない。
再会するまでずいぶん遠回りしてきたけど、会いに来てくれて嬉しかったよ。
ドキドキしている心臓。
赤く染まっている頬。
繋がっている唇。
翔くんしか考えられなくなっている恋心。
身体中が翔くんを愛してるって言ってるのに、素直に愛してるって伝えられないのはこんなに辛い事なんだね。
翔くんと再会するまで知らなかったよ。
私達の運命はここまで。
お互い遠く離れている間に、それぞれ新しい出会いがあって、既に違う人生を歩み始めていたんだよ。
いま気持ちが繋がっていても。
もう一緒にはなれないんだよ…。
涙を隠すように手で顔を覆っていた愛里紗は、急激なショックにより足の力が抜けてその場にストンと座り込んだ。
「愛里紗っ!」
翔はすかさず愛里紗の両肩を手で支えて再びその場に立たせた。
「………っ、…大丈夫」
乱れた髪に嗚咽の声を漏らしながら泣き疲れて震える肩は、支えている翔の手のひらにも伝わった。
「…わかった。わかったから、もう泣かないで」
愛里紗の気持ちが痛いほどビシビシ伝わった翔は、切ない眼差しで愛里紗の髪を優しく撫でた。
再び翔の香りに包まれた愛里紗は、指先から温もりを感じながら声を漏らして泣き崩れた。
恋の香りを忘れてしまっていた私は、大好きな彼と五年越しに気持ちが繫がった瞬間、無惨にも最後の代償を払う事になった。
ーーこうして、私と彼は二度目の別れを迎えて、この日を境に再び別々の道を歩む事になった。