…だけど、私達の恋は許されない。

誰にも相談出来ないような恋は、誰にも歓迎されないし認めてもらえない。



あと一歩勇気が必要だった時に友達に背中を押してもらったり、恋が実った時に一緒に喜んでもらったり、友達や家族に歓迎されていたのは、今や過去の話。


恋の終着点は、先行きが不透明なほど障害物だらけだった。



お互いの気持ちが伝わって両想いだと確信しても、願ったり叶ったりにはならない。
私の感情一つで決められない今がある。
それを創り出したのは紛れもなく自分自身。

だから、夢心地の時間はもうおしまいにしないと……。






私は翔くんの胸に手を押し当てて繋がっている唇を離した。
顎からポタポタ滴る涙で、ぐしゃぐしゃになっている顔を上げる事が出来ない。

身体を丸く縮こませて、鼻をすするのに精一杯で過呼吸に近いほど息苦しい。



「ごめんなさい……」

「愛里紗…」


「翔くんの気持ちは凄く嬉しい…。五年前の約束通り会いに来てくれた。きっと、毎日神様にお祈りしていたから、今になってようやく願いが通じてくれたのかな」

「ごめんっ…、すぐに会いに行けなくて……」


「…ううん、こうやって会えないのも運命だった。でもね、翔くんと離れ離れになってから、新しい生活が始まって、新しい出会いがあって、新しい情が生まれて……。翔くんと離れていたこの五年間に多くの人に支えてもらったの。

今はあの頃になかった大切なものがある。それは両手で抱えきれないくらい大切なものなの。私の手で守っていきたいの。


……だから、翔くんの気持ちに応える事が出来ない。…ごめんなさい」



瞳から溢れ出る涙と、興奮で荒げた息遣いで今にも窒息しそうだった。



本当は想いが繋がる瞬間をどれだけ待ち望んでいた事か。
お互い想い合ってるのに、今の私には手が届かない存在に。