……でもね、翔くんの嫌いなところが一つだけあるよ。
それは、神社で一人きりで待っていたところに翔くんがいきなり現れて、私が手にしていたシャボン玉のストローを取り上げて、「遅くなってごめん」とか言いながらはにかんだ笑顔で横に座って、口にくわえたストローから息を吹いて、シャボン玉に新しい命を吹き込んでくれなかった事。
ずっと長い間、一人でシャボン玉を吹いていたから、吹き込む息が続かなくなって。
息を吹き続ける事が無駄に思えて、いつしか疲れるようになっちゃって。
孤独感と空虚感に押しつぶされてしまって、シャボン玉の姿が涙で滲んで見えなくなっていったから。
思う存分、シャボン玉に命を吹き込む事が出来なかったから。
ずっと、私は一人ぼっちのままだったから。
神社の軒下で、光を浴びずに背中を丸めて小さく埋まったままだったから。
ううん、それは嘘……。
好き。
翔くんの嫌いなところなんて一つもない。
全部…。
全部大好きだよ。
あまりにも一人で長く待っていたから、何だか悔しくなって嘘をついてみただけだよ。