唇の柔らかみと共に伝わってくる温もり。
血が滾るほどの高揚感。
身体中から込み上げていく幸福感。
胸から心臓が飛び出してしまいそうなほどのドキドキ感。


とろけてしまうほどの甘いキスからは、引き裂かれていた時間がリセットされてしまったかのように、数年分の積もり積もった愛情が伝わってくる。


これが、ずっと探し求めていた恋の味かもしれない。





長年影になっていた光が既存していた力。
再び眩しいくらいの光を身体中に浴びた瞬間、気持ちに誤魔化しが効かなくなった。




私も翔くんが好き…。

大きな瞳を塞いでいる長い睫毛や。
頬を包み込んでいる大きな手のひら。
唇から直に伝わってくる温もり。

頻りに愛の言葉を唱える大人びた低い声。
恋の香りを醸し出す彼の独特な香り。
後ろからの足音が聞き取れるくらいの広い背中。



一生懸命書いたのに届かなかった手紙。
別れてからも忘れる事が出来なかった一途な想い。
揺るぎなくストレートにぶつけてくる感情。
私にしか辿り着けなくなった不器用な終着地。

まだモヤがかかっている未来まで見越してしまうほど、ブレない恋心。

こうやって、キスで繋がった僅かな時間さえも、狂おしいほど愛おしい。




ずっと気持ちに嘘をついてた。
だから苦しかった。



私には理玖がいるし、咲の事もあるから、翔くんの事は早く忘れようとしても。

いち早く翔くんから離れないと、大事なモノが崩壊してしまうから、私はこうだからと無理に気持ちを押し固めようとしていても。

先に心がそっぽを向いてしまったから、なかなか思い通りにはならなかった。



きっと、頭の片隅では翔くんを忘れる気なんて更々無かったのだろう。





それどころか、いまこの瞬間だって何もかも捨てて、翔くんの胸の中に飛び込んでいきたい。