正直に言うと、会いに来て欲しくなかった。
まだ気持ちが整理しきれていないのに。
これから時間をかけてゆっくり忘れていこうと思っていたのに。
翔くんをしっかり忘れてから、理玖と再スタートを切っていこうと思っていたのに。
理玖と交際を続けていく為に、紛失してしまったネックレスだって一生懸命探して見つけたのに。
…それなのに、どうして好きだと言いに来たの?
私だって翔くんが好きなのに。
ひとときも離れたくないのに。
一人の女性として好きな人に好きって言われた時が、人生で最高に幸せな瞬間なんだよ。
ーーもう、我慢できない。
どうして私だけ沈黙を続けるの。
どうして私だけが我慢しなきゃいけないの。
好きな人がいま目の前から去ろうとしているのに、引きとめる事すら許されないの。
長い歳月がかかったとしても、私を忘れずに会いに来てくれたのに。
今日ここで別れたらもう次はないのに……。
だから、お別れをする前に一度だけ本音を言わせて。
建前とか全て取り払って想いを伝えさせて。
これで最後にするから。
もう二度と口にしないから。
たった一度だけ想いを伝えたら、今まで通りの居場所にちゃんと戻るから……。