ーー腕時計の針は17時を越えた。

木々に遮られている街灯が一斉に灯る。



翔くんの背中を見るのはおよそ一ヶ月ぶり。

近くにあっても実は遠い広い広い背中。
無邪気に遊んでいたあの頃とはまるで別人のよう。
凛としている背中は、数ヶ月前まで咲が見てきた光景だ。



翔くんと理玖は、顔も体つきも性格も雰囲気も全て対照的。


理玖は私に背中を向けない。
お互いの顔を見て賑やかに肩を並べて歩く事が多かった。

でも、翔くんは背中を向けたままでひとことも語らない。
背中で私の足音を聞き取っている。
だから、信号を渡りそびれて足を止めた時は、すぐに気づいて戻ってきてくれる。



背中を向けていても気に留めていない訳じゃない。
地面に擦れている足音を身体全体で感じ取っている。

わざとゆっくり歩いたとしても、彼は私とはぐれないように歩調を合わせてくれるだろう。





話し合いの場の神社に到着すると、三歩先を歩く彼に続いて鳥居をくぐる。



二人で一緒に鳥居をくぐったのは、翔くんが引越して行ったあの日以来で、実に五年ぶりのこと。
あの当時から比べると、真後ろから見回した神社の光景が少し変わったように思えた。