玄関扉を開けると、門の先には等身大の翔くんの姿が。
残念ながら、彼の姿を見るだけでも自然と意識が吸い寄せられていく。



「いま、時間ある?」

「……うん」


「話をしよう」



無表情で語る彼に黙ってコクンと頷いた。

部屋に上着を取りに行ってから、門で待機している彼の元へ。
彼は目線を外すと、後について来るようにと無言で背中を向けた。



一体、何の話をするんだろう。
先日は突き放すような言い方をしたから、もう縁が切れてしまったと思ってた。





翔に連なって歩き始めた愛里紗だが、咲や理玖の事が次々と蘇ってしまい、前に向かわせている足とは対照的に、心は後ろ向きになっている。



この街は、日が沈みかかると自然と人通りが少なくなる。
いま翔くんと一緒に歩いている歩道は、片手で数えられるくらいの人数しか姿が見えない。