ーー神社を訪れた日から一夜明けた、日曜日の夕方。
おじいさんからのアドバイスを思い巡らせて一日中ボーッとしていた私に急展開が訪れた。
ピーン ポーン……
自宅のインターフォンが鳴った。
一階のリビングにいる母親がインターフォンの受話器を取って、モニター越しに問いかける。
「はい、どちら様でしょうか?」
『…今井と申しますが。愛里紗さんはご在宅でしょうか?』
「えぇ、少しお待ち下さいね」
母親は受話器のマイク部分に手を添えると、大きな声で部屋にいる愛里紗を呼んだ。
ベッドに転がっていた愛里紗は母の声に気付くと、駆け足でリビングに向かう。
愛里紗は受話器を受け取ってインターフォンのモニターに目を移すと、そこには翔の姿があった。
思わず胸がドキッとする。
翔は名字が変わってすっかり大人びてしまったせいか、母親はモニター越しの翔が卒業式の日に神社で愛里紗と泣き別れた谷崎と同一人物だという事に気付かない。
また、翔くんに会えるなんて思いもしなかった。
もう二度と会えないと思っていたから、急に現れても心の準備が出来ない。