「愛里紗ちゃん。泣いてるみたいだけど、どうかしたのかな」



愛里紗の真横に姿を現した神社のおじいさんは、ほっこりとした優しい笑みを浮かべていつもと変わらない穏やかな口調でそう言った。



「あっ…、おじいさん。……あれ、涙が出てたかな。おかしいな」



おじいさんを横目でチラ見した後、無意識に滴っていた涙を俯きざまに指先で拭った。



「何か悩み事でもあるのかい?少し様子がおかしいように見えるんじゃが」

「あっ…。いっ、いえ」


「もしかして、恋煩いでは……」

「まっ…まさか、そんな…」



目元を優しく細めてスローテンポで話すおじいさんの鋭い勘に、一瞬胸の内が見透かされてるように思えて戸惑った。



「そういえば、先日久しぶりに谷崎くんがここへやって来てのぅ……。元気そうじゃったよ」

「…そうだったんですね」



おじいさんは私が彼と再会した事を知らない。
きっと久しぶりに神社を訪れた私の顔を見て、セットで彼の事を思い出したんだろうなぁと勝手に思い込んでいた。



翔くんと二度目の再会をした時に久しぶりに神社を訪れたと言ってたから、あの後もう一度一人で神社を訪れていたんだね。