理玖を嫌いになった訳じゃない。
会えば楽しいし、優しいし、大切にしてくれる。


でも、翔くんと再会する前みたいに、理玖だけを考える余裕がなくなってしまった。
止めようとすればするほど、心の距離が開いていくような気がしてならない。





きっと、理玖自身も心の変化に気付いてるはず。
ただ言わないだけ…。


こんな酷い状況が続いているけど、傷付ける気など更々ない。
いまこの瞬間ですら、賑やかに笑いあっていたあの頃に戻れるなら戻りたいと思っている。



『私はずっと傍にいるよ』



涙を光らせながら悲しみに明け暮れる理玖にそう言って格好つけた。

……だけど、嘘つき。
あの時交わした約束が今はただの口約束になっている。



『あんたがいま付き合ってるのは理玖でしょ。心を決めて告白を受け入れたんでしょ。だから、これから先もずっとあんたの傍にいるのは翔じゃないよ』



最近、悩み相談をしたばかりのノグから言われた言葉。

わかってる。
理玖と付き合い続けた方がいいに決まってる。


大切にしてくれているし、
いつも笑わせてくれて楽しいし、
人から羨ましがられるほどイケメンだし、
えくぼがかわいいし、
愛し続けていてくれるし、
友達も応援してくれるし、
お互いの両親にも公認だし。

二人の障害は何一つないんだから…。




だけどね…。
上手くやっていこうと自分に言い聞かせても、心がいう事を聞いてくれないんだよ。

中途半端で宙ぶらりんで不都合な気持ちは、残念ながら人を傷つける準備を始めてる。