咲はアルバムを本棚に戻すと、何事もなかったかのように振る舞う。
「そうだ!ホワイトデーが近付いてるね。理玖くんは何をプレゼントしてくれるのかな」
咲は言葉だけを弾ませて今の心境を隠した。
だが、ひんやりと冷え切った空気が二人の間に流れ込み、何処となくぎこちない雰囲気に。
しかも、理玖との関係がギクシャクし始めている愛里紗にとって、理玖の話題は少し窮屈に。
「咲…」
「いいな、頑張って手作りしたからお返しが楽しみだね」
バレンタイン前日の件を咲に伝えてないから、咲は私の悩みを知らない。
「咲……」
「理玖くんは凄くセンスがいいから、またアクセサリーとかプレゼントしてくれたりして」
「……」
「愛里紗はいいな。いつも大事にされてるから幸せだよね。きっと、マフィンも喜んでくれたんでしょ」
「咲……」
「ネックレスも理玖くんが見つけてくれたんだよね。愛里紗には理玖くんみたいな優しくてカッコイイ彼氏がいるから羨ましいよ」
咲の涙を見てから、目を覆いたくなるような過去が脳裏を駆け巡っていたけど。
理玖の話題まで着手されて頭がいっぱいになってしまった私は、既に精神状態が限界を迎えていた。