彼女と念願の再会を果たした時は、何もかもが手遅れになっていた。

それぞれの隣には新しい恋人が。
俺達は離れ離れになってる間に別々の人生をスタートさせていた。


しかも、理玖という男は想像以上に愛里紗を愛している。
今から手を尽くしても取り返しがつかないほど、互いの運命は大きく狂い出していた。



遅かった……。
何もかもが。
運命に見放されてしまったのか、別れた時に失ったものがあまりにも大き過ぎる。


こんな結果が待ち受けていたのなら、引越し当日に神社に隠れるような一時凌ぎじゃなくて、「引っ越したくない」と這いつくばり続ければ良かった。



しかも、一番の失態は中学生の頃に彼女に会いに行かなかった事。

昔住んでいた街を遠い場所と位置付けて、会えない原因を両親のせいにしていたけど、実は俺自身が現実から逃げていたかもしれない。


早く会いに行けば、何かが大きく変わっていたかもしれないのに。
愛里紗を泣かせずに済んだかもしれないのに…。


大事な事は後になって少しずつ気付かされていく。
今さら後悔しても取り返しがつかないのに。



でも、今からの巻き返しは厳しくても、五年間の想いを無駄にするつもりはない。
後悔だらけの自分からはもう卒業したい。

世界中探し出しても、愛里紗の代わりになる人なんていないから。



あの日は別れ方が曖昧になってしまったから、もう一度向き合おう。
それでもダメならケジメをつけよう。
愛里紗の幸せを心から願ってあげよう。

最後まで自分らしさを貫いていこう。



再び愛里紗とぶつかる覚悟を決めた翔は、合わせた両手の中に思い出のイルカのストラップを包み込んでおでこに当てて目を閉じた。

それは、まるでイルカのストラップに二人の希望を託すかのように…。