俺は受験勉強中のノートの端に正三角形を書いた。
この三角形には三角関係の意味が含まれる。
それぞれの角には三つの名前が入る。


一つ目は俺。
二つ目は愛里紗。


三つ目の名前を書こうとした、その時。
咲ちゃんの名前を書くべきか、それとも理玖の名前を書くべきか一瞬迷った。


愛里紗の名前と俺の名前を書き綴った三角形の間に入る名前は一つだけではない。
この時点で二つ目の三角形が存在している。

決して四角形ではない。



その間にあるのは俺達二人。
両方の三角形の違いは、ただ三つ目の名前が変わるだけ。



一つ目には咲ちゃんの名前を入れた。
でも、この三角形は一方的な別れの言葉を告げたと同時に終わりを遂げている。


勝手な想像だけど、自分の名以外の二つの角は、今は昔と変わらず線と線として結ばれているだろう。
でなきゃ、愛里紗は俺が告白したあの時に咲ちゃんの名前を挙げなかったはず。





元々俺達の間に三角形なんて存在しなかった。

俺と愛里紗は点と点で結ばれている一本線だった。
まるで赤い糸のようにしっかり繋がっていた。

お互い離れていた空白の時間が、どうやら新しい二つの三角形を生み出してしまっていたようだ。



二つの三角形を書き終えて全ての名前の記載が終わった時。



『翔くんに会いたかったのは今じゃない。迎えにきちゃダメだよ……』



愛里紗があの時に言っていた言葉の意味が少し理解出来たような気がした。