ーー三寒四温。
季節風が春真っしぐらに向かい、卒業シーズンを迎えた。
今日から三月に入り、小さく膨らんだ蕾がいよいよ開花の時期を迎える準備を始めた。
放課後に咲を体育館裏に呼んだ木村は、約二年という長い歳月を経て告白をした。
二学期の期末テスト前日に返し忘れたノートの件で迷惑をかけた日もあったけど、咲が転落事故を起こした際はいち早く気付いて迅速な対応を取ったり。
咲の知らないところで執拗に繰り替えされた悪口から擁護する勇敢な姿を見せたり。
一日一日に想いを膨らませながら、新たなる決意を胸にぶつかる覚悟を決めた。
一方の咲は、急展開に戸惑っていたが、木村が以前から恋心を寄せていた事に気付いていたので割と素直に気持ちを受け入れた。
「ありがとう。嬉しい……」
目を細めてニッコリと微笑んだ予想外な返答に、木村は目を丸くして驚いた。
だが、咲の話はここで終わりではない。
「木村くんの気持ちは嬉しいんだけど、私にはどうしても忘れられない人がいるの。だから、今はいい返事が出来ない」
「そっか…」
木村はフラれたショックにより大きな肩をストンと落としたが、咲の話はまだ続く。
「でも、今はその人を忘れる努力をしている最中だから、もう少し時間をちょうだい」
咲は新しい恋の受け入れ態勢は整っていないが、時間と共に気持ちが落ち着き始めて自分なりに翔との恋から卒業しようと前向きに考えていたところだった。