すると、理玖はしんみりした空気を一掃しようと思ったのか、自分側に指を向けて急に甘ったるい声を出した。
「今日はバレンタインだし、ネックレスも一生懸命探して見つけたからお礼にチューして」
「えっ!チュウ?」
急展開を迎えて頭の中が真っ白に。
正直、今はキスをしたい気分じゃない。
昨日はキスを拒否してしまったし、心の中には翔くんが棲んでいる。
でも、このままじゃダメだと思う自分もいるし、翔くんへの想いを断って今後も理玖と上手くやっていきたいというのが本音だ。
だから、理玖のホッペにキスをした。
…ところが。
「だめ、そこじゃない!ここ。ここに」
理玖は唇を尖らせながら、自分の唇に指をさしてキスをするよう催促。
一度自分の意思でキスをしてしまっただけに、彼の甘え方も徐々にエスカレートしていく。
「ちょちょちょっと…、何言ってん…」
「早く。チュー」
「はっ…早くって、言われても…」
言葉では若干否定的しつつも、私達は恋人だからいつものように唇を重ねる。
すると、理玖の手のひらが私の頬を包み込む。
重く深まる長い長いキスに理玖の心中が染み渡ってくる。
少し強引気味にキスをねだってきたから、ただ単に私の気持ちを確認したかったのかもしれない。
私はこれから自分の気持ちにケジメをつけて平和だった日常に軌道修正していかなければならない。
それが私にとって最善策だと思うから。