雑念混じりで作った黒く焦げているチョコマフィンを一日ぶりに目にすると、わざわざ手作りしないで買った方が良かったかなぁ…なんて後悔する。



「今回も頑張って作ったのに…。なんか、私お菓子作りに向いていないみたい」



不甲斐ない自分に肩を落としていたが、箱の中からマフィンを取り出してガブッと一口でかぶりついた理玖は、小さなエクボを覗かせた。



「そ?俺にはこれ以上にウマいもんねーけど」

「でも、失敗して焦げちゃったから…」


「そんな小さな事なんて気にしない。大事なのはプレゼントしようと思う気持ち。このマフィンもお前からのキスも、俺にとっては大切なプレゼントだった。だから、今後は一つ足りとも手放すつもりはないよ」

「理玖…」



それは、翔くんが念頭に置かれているような言い方だった。
好きだから手放したくないという強い想いが、進行方向が逸れ始めている私の胸に一つ一つ深く染み渡ってくる。

だから、理玖の気持ちに上手く応えられなくなってる自分に嫌気が増す一方だった。