「ここに落ちてたんだ……」
手のひらで一日ぶりにネックレスの重みを感じると共に掠れた声が漏れた。
しかし、ネックレスをよく見てみると、街中を行き交う人々の注意力が散漫していたせいか、踏みつけられてしまったかのようにハートを囲んでいるフレームが歪んでいる。
落とす前までは綺麗な形を保って輝き続けていたのに、落としてしまった後は一晩冷たい雨にさらされた挙句に一人ぼっちで傷を負いながら持ち主が現れるのを待ち望んでいた。
ごめんね。
寂しかったでしょ。
辛かったでしょ。
一人ぼっちにしちゃって本当にごめんね…。
後悔の念に苛まれた愛里紗は、ネックレスに謝るように両手で握りしめて、溢れ出す涙を抑えるようにネックレスの入っている拳を目に当てた。
「壊れちゃった…。このネックレスがお気に入りだったのに」
「また買ってあげるから。ほら、そんなに泣くなって」
「…ううん、これがいい。このネックレスじゃなきゃ意味がない」
「愛里紗…」
「理玖から貰った日から私の宝物だから、今まで壊さないように毎日身に付けて大切にしてたのに」
理玖の前で肩を震わせて泣いた愛里紗は、自分に強く言い聞かせるようにネックレスを強く握り締めた。