ーーバレンタイン当日の放課後。

学校から駅までの道のりを咲と一緒に目で追いながら紛失したネックレスを探し歩いた。
でも、行きと同様どこを見回ってもネックレスは見つからない。



口から溢れる深い溜息と。
瞼の中に滲み出る涙。
消えたネックレスの行方にショックと動揺が隠しきれない。

次第に口数が減っていくと、咲は肩を落としている私に「すぐ見つかるといいね」と言って励ましてくれた。



駅の改札を過ぎたところで咲と別れてから1分と待たずに到着した電車に乗り込む。

扉に寄りかかり、コートのポケットからスマホを出して理玖にこれから待ち合わせ場所に向かう事と、ネックレスが見つからなかった件をSNSメッセージで報告した。



電車が地元駅に到着してまばらな人並みに紛れ込んで行くと、理玖は改札の向こう側で到着を待っていた。

すぐに気付いてくれたけど、そこにはいつものような屈託のない笑顔じゃなくて、昨日別れた時よりも少しだけ晴れた表情だった。