不機嫌な足どりで階段を下っていく三人組を見届けている木村の背中を瞳に映した私達は、お互い口を黙らせたまま。
ふと咲の様子が気になってゆっくり目線を当てると…。
咲はボンヤリしたような目から、大粒の涙を左右非対称にポロポロと滴らせていた。
目線の先には階段に一人取り残されている木村。
僅かな感情を覗かせる咲に思わずひとこと漏れた。
「咲……」
「………わかってる。…わかってるから、何も言わないで」
咲は震えた声でそう言うと、俯きざまに滴る涙を右手の甲で拭う。
咲の言葉は核心づくものじゃなかったけど、私にはその言葉の意味がわかったから、隣からそっと手を握った。
翔くんの事が忘れられない咲。
その傍らで咲を思い続けている木村。
一方通行の恋。
未来はぼやけてしまっているけど、私は咲に明るい未来が訪れる事を心から願っている。