ーー昼休みは残り10分を切った。
咲の手作りクッキーを配りに行った先の四組の教室から出て来た私と咲は、紛失したネックレスの話をしながら自分達の教室へと向かった。
「えーっ!ハートのネックレスを何処かに落としちゃったの?愛里紗はあんなに気に入ってたのに…」
「…うん。フックが弱っていたのが原因だよね。だから、今日はバレンタインを楽しむと言うよりも、ネックレス探しの方がメインになっちゃうかも」
「校内とか学校の付近とか、駅方面は探してみたの?」
「登校中に簡単に目で探したり、あちこち聞いて回ったんだけど、何処にも見当たらなくて」
「そっかぁ…。じゃあ、ネックレスを探しながら歩いて帰ろうね」
「ありがと。今日中に見つかるといいなぁ」
ネックレス探しに協力的な姿勢を向けてくれた咲と教室前の廊下を歩いていたその時。
「さっきさぁ、バレンタインだからって駒井が教室で堂々とクッキーなんて広げちゃってんの。男に配るつもりでわざわざ見せびらかしてるんだろうね」
三組の教室の向かい側にあたる階段から、咲の悪口が繰り広げられていた。
その悪口が私達の耳に届いた瞬間、肩を並べて進めていた足は二人揃えるように階段横で止まった。