私達がケンカをしたあの日から時間が経った今でも、こうやって聞き出さなければ咲は自分の殻に閉じこもったままだっただろう。

二人の間にいざこざがあったにも拘わらず、咲は目を腫らしている私の変化さえ見逃さないのに、残念ながら私は咲の力になる事さえ出来ない。



咲は失恋の苦しみから解放されていない。

私に言えずに一人で悩んでいて。
誰にも相談できなくて。
やりきれない気持ちを胸の内に秘めていた。



ごめんね…。
辛かったでしょ。
咲の悩みは翔くんだけじゃなかったのに、今までどれだけ辛い日々を送って来たの。

私だって咲の事が大好きなのに、親友の私が支えてあげれなくてごめんね。







「愛里紗、どうしたの?肩が震えてるけど…、もしかして泣いてるの?」

「…ううん、ちょっと調子がイマイチで」


「大丈夫?保健室一緒に行こうか?」

「平気だよ。心配してくれてありがとう」


「だって、私は親友だもん。心配するのが当たり前でしょ」



咲は辛い話の後でさえ私の身を案じている。




咲は私の親友。
二年近くも親友。
今までもこの先も、ずっとずっと大好きな人。

私達の心の溝が埋まりきるには少し時間がかかるかもしれないけど、心通う親友だからいつかきっと分かり合えるだろう。