咲は私と仲直りした後、翔くんの件について一切触れなかった。
それは、一ヶ月経過した今も同じ。
私達二人の間にとって翔くんという人物は、いつしか腫れ物のような存在に。



咲は時たま寂しそうな瞳で物思いにふけっていたから、敢えて口にしなくても心情は察していた。

だから、痛恨の一撃を食らったような気分に。




翔くんと過ごした一年間より、咲と過ごした時間の方が倍近く長いから、咲と会話しているとつい翔くんの存在がボンヤリしてしまう。

咲はこれからもずっと友達でいたいと言ってくれてるし、お互い関係を拗らせたくないというのが現状だ。

だから、昨日のような辛い出来事があっても相談出来ない。



咲が今まで翔くんの事を黙っていた気持ちが思い知らされたと同時に、自分自身も翔くん絡みの悩みを打ち明けられない事に気付かされた。